20分の昼寝を、予定表に入れる
午後2時の会議室で眠る人は、怠けているのか、整えているのか。
東京・神田にある社員31人の設計事務所では、共有カレンダーに「仮眠室」という名前の会議室がある。定員は1人。予約枠は20分きざみで、13時から17時のあいだだけ開いている。9月のある水曜日、この枠を予約した4人の午後を見せてもらった。
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最初の予約は、入社3年目の設計担当だった。前夜は図面の修正で午前1時まで働いている。仮眠室といっても、もとは資料庫だった3畳の部屋に、リクライニングの椅子と毛布があるだけだ。照明は消さない。「暗くすると深く眠りすぎて、起きたときがいちばんつらい」と、この制度を始めた代表は言う。
彼女は椅子に座り、備え付けの耳栓とアイマスクをつけて、スマートフォンのタイマーを20分に合わせた。目を閉じてから寝息が聞こえるまで、6分だった。
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タイマーが鳴る2分前に、彼女は自分で目を覚ました。「たいてい鳴る前に起きます。眠ったというより、頭の音量を下げた感じです」。机に戻って最初にしたのは、朝に書いたメールの読み返しだった。「午前中の自分の文章が、別の人が書いたみたいに読めます。判断が要る仕事は、この20分のあとに回しています」
代表がこの制度を入れたのは4年前だ。きっかけは、自分が会議中に何度も落ちていたことだった。「隠すのをやめて予定に入れたら、誰も何も言わなくなりました。予定表に書いてあることは、仕事なんです」
20分に根拠はあるのか
20分という長さは、代表の体感から決まった。あとから調べたところ、1990年代にNASAが旅客機の乗務員を対象に行った実験で、26分ほどの仮眠のあとに注意力が上がったという報告がある。30分を超えると深い睡眠に入りやすく、起きた直後にかえってぼんやりする。この事務所の枠が20分なのは、それより少し短い側に寄せた結果だ。
制度を始めて4年、仮眠室の予約は月に60回前後で推移している。31人の事務所で、ほぼ毎日3人が使っている計算になる。使う人は偏っていて、半数の社員は一度も予約したことがない。「使わない自由も、予定表に載せている理由の一つです。誰が使ったかはカレンダーを見れば分かる。それで何か言う人はいません」
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最後の枠を使ったのは代表本人だった。この日は朝から4本の打ち合わせがあり、夕方には採用面接が残っていた。「面接の前は必ず寝ます。相手の話を聞く仕事は、自分の中が静かでないとできません」
眠っている人を怠けていると見るか、整えていると見るか。この事務所では、その判断を予定表に委ねている。書いてあれば仕事で、書いていなければ休憩。それだけの区別が、会議室で眠ることを恥ずかしくなくした。
事務所と社員の希望により、社名と氏名は伏せています。予約回数は事務所のカレンダーの記録によるものです。
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